「電源抜いちまうかもう」

だって戻れない。嗚呼。帰れない。嗚呼。時限式カラミティ。

1-4 下着泥棒と生きていた死体

真実はそんなに大切なことだろうか。


最後に佐古さんは赤井さんの奥さんに話をしに行くと言った。
真実を告げて謝るのは確かに誠意なんだろうし、大切なことなんだろうけれども。
告げられた赤井さんの奥さんの方はどうなんだろうか。
それまでは情けない旦那を持ってしまったことを嘆けばよかったかもしれないが
今度は佐古巡査部長を恨まなくてはならない。絶対に恨んでしまう。
そこにはなかった「もしも」が現れて、佐古巡査部長を恨んでしまう。
ブラック・ジャックに、患者の生命力を吹き返させる為に
あえて恨まれ続ける話があった。
だがそれとは違う。佐古巡査部長には確かに責任がある。
佐古さんは反省し、遺族に真実まで告げた。しかもそれが理由で職を失っている。
でも彼が真っ先に病院へ行っていたら赤井さんは助かったのも事実だし、
佐古さんもそのことを隠蔽しようとした。
遺族は激しいジレンマに襲われるのではないだろうか。
とかく、人を恨みながら生きるのは苦しい。知らぬが仏とはよく言ったものだ。
佐古さんは真実を告げ懺悔をすることで気持ちの整理がつくかもしれないが
それは代わりに奥さんや遺族を苦しめやしないだろうか。
ならばただのエゴではないか。
…どちらの当事者の経験もない私が大口叩けることではないけれども。


日誌の改ざんだって仕方なかったかもしれない、と私は思う。
例えばその強盗が凶器を所持したまま興奮していたら。
他の者を襲おうとしていたら。
そう考えると強盗(泥棒ではなく"強盗"なのだ)の確保が
酔っ払いより優先されても仕方ないと思う。
考え方によっては酔っ払いは自業自得なのだし。
身柄を引き受けた以上警官に責任があるにしても。
滝川署が隠蔽を行なったのも、仕方なかったと思うし、
一番"幸せ"な方法だったと思う。*1
署長に傷をつけない為、というのはカナリ癪ではあったが。


真実の追求は確かに大切だし、それを追求するから確かに特命係なんだけれども。
やっぱり釈然としないなぁと今の私は思います。
また何回か見たりすれば変わるんかもしれないけど。
でも右京さんと薫ちゃんの覚悟はすごくカッコよかったし、
トカゲの尻尾である特命係の話だからこそ面白かった。
"組織"というものはデカくて怖いな、と思った。人間ってのはちっぽけだ。


「怖いです。こんなことが積み重なって警察が信用じてもらえなくなくなるのが」
「覚悟はいいですか」「警察官ですから」
今回のこの台詞は相棒史上カナリの名台詞。
窓際部署でも誇りを失わない貴方たちを愛してる。
今の日本で、特命係は何処にいますか?


小ネタはまたいつか。
小野田の皿戻し見れてよかった。
あと下着泥棒の有薗芳記さんが秀逸だった。

*1:池波署の裏金の話にも通じるものがありますね