「電源抜いちまうかもう」

だって戻れない。嗚呼。帰れない。嗚呼。時限式カラミティ。

おそ松くん・おそ松さん「チョロ松」の名前の由来と赤塚先生の想い

松ロスに陥る間もなく
怒涛のコラボやら特集やら、という感じですね。
なごみノベライズが話題のダ・ヴィンチからの話題です。

なごみノベライズについては、なごみ研究部に任せるとして
私は『六つ子なだけに六つのトリビア』コラムで気になった
「六つ子の命名は超テキトー!?」という記事について
反論というか……再検証させていただきたいと思います。

長男の「おそ松」は食事の後の「お粗末さまでした」が由来と推測される。二男の「カラ松」は「カラマツ」という針葉樹(公認HPによると「空っぽ」説もあり)、四男の「一松」は「市松模様」、五男の「十四松」は鳥のジュウシマツからの命名だろうか。六つ子全員がダジャレの命名だと思われがちだが、三男の「チョロ松」と末っ子の「トド松」についてはすぐに言葉が浮かばない。公認HPによると、チョロ松は「チョロチョロすばしっこいのが特徴」とあり、トド松は「トドのつまりの末っ子」とある。さすが赤塚先生、超テキトーである。

ダ・ヴィンチ 2016年5月号 36ページ

六つ子の命名はすべてダジャレだと思っていた私は
これを読んで頭にハテナマークがポポポンと浮かびました。

まず違和感を覚えたのは
「あれ?トドマツも木の名前だよね?」ということ。

トドマツ(Abies sachalinensis)は、マツ科モミ属の樹木である。
マツと付くものの、いわゆるマツ(松、英語:pine)が属するマツ属 (Pinus)ではなく、モミ属 (Abies) に分類される。
北海道のほぼ全土と千島列島南部、サハリン、カムチャツカ半島針広混交林から亜寒帯林にかけて分布する。

トドマツ - Wikipedia

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そうです。やっぱりトドマツという木がありました。
というかそもそもそこから派生して
「材木松」なんて呼称もファンの間で生まれてるのに……。

カラ松がカラマツの木と「空っぽ」をふたつかけたダジャレなように
トド松もトドマツの木と「トドのつまり」をかけた名前とみるのが妥当でしょう。

この時点で、記事の「赤塚先生はテキトーに名づけをした」という
結論が崩れています。

そこで気になるのが三男チョロ松。
ここまできたら全部ダジャレで(というか元々あった日本語から)
つけているのが妥当でしょうし
私もそう思っていたので、改めて調べてみました。

まずは松野チョロ松以外で出てくるのがwikipediaの「チョロ松」の項ですが

チョロ松(チョロまつ)は、猿まわしを演じるニホンザルの名前。
初代チョロ松(1977年-2007年1月14日)。 <中略> 1987年にソニーウォークマンのテレビCMに出演し、「音楽を聴きながら瞑想するサル」として話題になった。

チョロ松 - Wikipedia

こちらは初代が1977年で、おそ松くん連載開始が1962年なので候補としては除外。

次に見つけたのが、こちらの知恵袋。
detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

こちらの回答で

○○松という名前は昔商家の丁稚奉公に上がると、本名の一字に「松」や「吉」を付けた名前で呼ばれたのです。そして仕事で失敗などすると「○○松」が「ちょろ松」などと言って叱られたわけです。

<中略>
「おそまつ君」は関係ないでしょう。おそまつ君が連載されたのは昭和30年代後半です。私ら戦後生まれのものはそれ以前の30年頃には「ちょろ松」と言って、人を馬鹿にする時に使っていましたから・・・

ちょろちょろする子供を「ちょろまつ」と言いま... - 日本語 | Yahoo!知恵袋

というものがありました。ソースとしては心もとないですが
これで方言や俗語として「ちょろ松」という言い回しがある可能性が高まりました。

さらに調べていたところ宇和島方言入門というサイトにさらに記述を発見。

接尾語で、人を侮蔑、あるいは馬鹿にしていいう言葉。良い表現ではないが
~さく、~まつ、~たれ、~たん、~さく。
例・ぼけさく。ちょろまつ。ばかたれ。あほたん。いやみさく。

宇和島方言入門

ソースは宇和島弁についての記述ですが
(リンク元に引用出典が明記されているようです)
もう少し広域で、古くから使われている言葉のような印象を受けました。

また、Twitterでもフォロワーのkmkさんから情報をいただきました。




ちなみに赤塚不二夫満州引き上げ後に
奈良の大和郡山に3年間住んでいたとのこと。*1

私は方言の体系についても赤塚研究についても
ほとんど未タッチで知識がない状態ですが
それでも、やはり元々あった日本語から取ったという説が
有力に思えます。

kmkさんのツイートから引用をもう少し。


「おそ松」という名前もそうですが、決してプラスの言葉ではないけれども
愛嬌のある優しさと柔らかさを感じる名前ですよね。
チビだからチビ太、嫌味だからイヤミ、ちょろまつなチョロ松。
こう並べてみると、この言葉が由来と考えた方がしっくりきます。

もちろん、赤塚不二夫公認サイトの表記は、ダ・ヴィンチで引用している通り。
本当にこの言葉が由来かはわかりません。

ただね、カラ松でカラマツを引っ張ってくるならば
「とどまつ」「ちょろまつ」という言葉についても
もう少し調べるべきだと思うのですよ。*2

以上、トド松とチョロ松の名前の由来と思われる言葉についてでした。

「ちょろまつ」について、まだ情報ありましたら
コメント欄やTwitterの@9ga80_klpまで情報くださいませ。
個人的に気になるので知りたいだけですが。笑

【4/8 4:30追記】
シェー!!の自叙伝―ぼくとおそ松くん (1966年)にて
6つ子の名付け方について赤塚不二夫本人の文で語られているとの情報。
(というか以前RTかなんかで回ってて見かけたことあったわ)
ちょっと後日図書館などで調べて付記します。

(2016/8/27 記事タイトルを『チョロ松はテキトーにつけた名前なんかじゃないだろう』から変更)

*1:wikiの自叙伝引用より

*2:大寺明さんという方がライターのようですが